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名古屋人ランナーのご当地な日々

走った自分へのごほうびとしてご当地スイーツ&グルメを食べまくる、ダメダメな40代ランナーの日常。

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残り物には福がある、寄せ集めチームにはドラマがある

私は自分がマラソンをするようになってから、にわかに箱根駅伝に興味を持ち始めました。

それで、初めてお正月に駅伝の中継を見ておやっと思ったのが「学連選抜チーム」の存在です。つまり、予選をパスできなかった大学からタイムのいい選手を集めて編成したチームですね。

いっしょに見ていた家人から、学連選抜は以前はオープン参加で、何位になろうと正式な順位としては扱われなかったと聞いて首をかしげました。順位として認めないなら、なぜわざわざ走らせたんだろう?


一応、その時点(2013年大会)ではちゃんと順位がカウントされる状況になってはいました。これも、今年1月の大会からはまたオープン参加に戻ってしまったようですが…

こんな立ち位置があいまいな学連選抜というチームを真正面から取り上げた陸上小説が、堂場瞬一の「チーム」(実業之日本社)です。
 


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あらすじ
毎年箱根駅伝にシード枠で出場していた城南大が予選会で落とされ、主将・浦は、前年度に自分が故障で大ブレーキになったのが原因と考えて落ち込むが、同じく出場できなかった美浜大の監督・吉池から「あとは自分のためだけに走れ」と学連選抜チームに誘われる。
大学の仲間を差し置いて自分だけが箱根を走っていいものかと悩む浦だったが、結局は前年のリベンジのため参加を決意。吉池からキャプテンに指名されて急造チームをまとめるべく優勝という目標をかかげる。わずかな合同練習を通して少しずつチームワークが育っていく学連選抜チームだが、ただ一つの問題は、優勝の鍵となる実力を持ちながらも「自分のためにしか走らない」と公言して和を乱し続ける天才ランナー・山城の存在だった。


ということで、この「チーム」は、以前読んだ「ヒート」の前日編になります。(正確には「ヒート」が「チーム」の続編、というか後日談)


※過去記事:華やかなマラソン大会の舞台裏で、男たちの想いが交錯する

「ヒート」では主人公の1人となる山城はここでの出番はひかえめで、出番は少ないながら「ヒート」で話の展開上重要な役割を果たした、山城いわく「単純バカ」の浦がこの話の主人公です。山城も重要な役で、一応準主役みたいな扱いかも?


やはり箱根駅伝の話ですから10人のランナーが選ばれるわけですが、「風が強く吹いている」のように10人全員にスポットを当てることはしません。特に重要な登場人物は5人です。

・3区:朝倉(大学で急に伸びたが、1年生で箱根は未経験)
・5区:門脇(浦の高校時代の同級生、クロスカントリーが得意)
・9区:山城(天才肌だが傲慢な一匹狼タイプ)
・10区:浦(面倒見のいい熱血主将タイプ)
・監督:吉池(老練な指導者だが、自チームが箱根に出場したことがない)


個人的には、5区の門脇がいいキャラだと思いました。最初、浦に学連選抜に誘われても冷めた態度を取り続けるのですが、それは実は箱根を走りたくてしかたがないという気持ちの裏返しでした。

彼の大学はぶっちゃけ弱小校で一度も箱根出場経験がなく、陸上部にも「どうせ箱根なんて夢のまた夢」という空気がただよっています。そんな中で自分一人が真剣に箱根を目指しても、「どうせ無理なんだから現実を見ようぜ」という反応をされそうで怖い。

だから表面上は興味のなさそうな振りをしていますが、陰では5区を走る自分を夢見て過去の大会のビデオを何回も見返したり、実際に5区の山登りコースを走ってみたり、水面下で必死に足を動かす水鳥のような努力をしている。その甲斐あって、ピンチヒッターとして起用された5区で目覚ましい成績を残すのですが、表面は飄々としているのにやるときはやる、熱くて頼りがいのある男です(*^^*)


あと、「ヒート」と同じく長距離を走るランナーについての描写のリアルさはさすがで、特に3区の朝倉などの経験の浅いランナーがやらかす失敗として、

  • ゆるい下り坂では、道が平坦に見えるのにスピードが出るので、自分が好調だと錯覚しやすい。
  • 気温が高いと、最初から体が温まっていてスピードが出るので、自分が好調(ry

というのも思い当たる節がありすぎて、なるほど( ・∀・)つ〃∩ヘェーヘェーヘェー という感じでした。


駅伝は個人競技? チーム競技?
名古屋近辺でも駅伝やマラソンリレー大会は開催されていますが、私は経験がありません。駅伝はレベルの近いランナー同士でチームを作る必要があると思いますが、私の周りはハイレベルな人が多くて組めないんです orz

だから想像するしかないのですが、駅伝というものはただ早いランナーを集めてくれば勝てるというものでもないみたいですね。


そのことは、他ならぬ学連選抜チームの成績が証明していると思います。以下はネットから拾って来た画像ですが、4位などの好成績をおさめた年もあるものの、基本的には順位が2ケタという年が多いです。


一応、予選落ちした大学から記録の良かった選手だけを集めているわけですから、個々のタイムだけを見れば上位校とくらべてもそれほど見劣りはしないはずです。

にもかかわらず順位がぱっとしない年が多いのは、やはり駅伝は単にハーフマラソンの記録を10人分集計するのとは違う、何かの要素があるということなのでしょう。


もちろん、監督がそれぞれの選手のことをよく知らないので効果的な配置を決めにくい、という現実的な理由もあると思います。でもやはり、

・同じ釜の飯を食った仲間のような信頼感や一体感がない。
・チームや仲間のために走るというモチベーションが得られない。

といった精神的な要素も大きいのではないでしょうか。


この本の中で、「サッカーの日本代表だって、ふだんは違うチームでプレーしている選手を集めてきて、少し合同練習をさせるだけで試合に出しているじゃないか」という発言がありますが、サッカーの代表チームには自分たちが日の丸を背負っているという意識があるわけですし、それは1つのチームとしてまとまる上で大きなモチベーションになると思います。


対して、箱根の学連選抜チームは、別に日本や都道府県などの自治体を代表しているわけでもない。モチベーションがあるとすれば、どんな形でもいいからとにかく箱根を走るということ。オープン参加でなく順位が認められる年なら、山城がそうだったように自分が区間賞や区間記録を目指すこと。

これは、次の選手にタスキをつなぐこととは何のかかわりもない、完全に個人競技としてのモチベーションです。自分の大学のチームで出場している場合と違って「仲間やチームに迷惑はかけられない」という気持ちは薄いわけですから、走っていてこれはダメだと思ったら気軽に棄権したり、そこまでいかなくてもドベ覚悟でスピードを落とすことも可能でしょう。


こうした個人的な目標以外では、10位以内に入れば翌年シード出場する大学が1つ減るので、自分の大学が次回出場できるチャンスを増やせる、というモチベーションもありえますが、それを実現するにはチーム全体がこの目標のもとにまとまる必要があります。

そう考えると、浦がぶち上げた「優勝」という目標は、山城には馬鹿にされましたがチームをまとめ上げるためにはけっこう当を得ていたのではないかと思いました。


走るのも止まるのも誰かのためでないと…
浦が「あの時、俺たち(学連選抜)は本当のチームになった」と振り返る、ある出来事があります。

それは、本来なら5区を走るはずだった選手が、直前になって脚に痛みを感じ、泣く泣く辞退を申し出たことです。

彼が辞退したことで、それまで箱根に興味なさげだった門脇が自分から5区に名乗りを上げることになるのですが、大事なのはこの選手が辞退したのはチームのためを思ってだったということです。


学連選抜は大学も違う寄せ集めチームですから、極端な話、自分が箱根を走りたいという都合を優先させて故障を隠し、途中で棄権するリスクを冒して出場することもできる。

それでも辞退したのは、故障した自分が走ればチームの優勝の可能性が低くなるから。これは、まさしく「チームの一員」としての判断です。このことが他の選手やマネージャーにも「自分たちはチームの一員なんだ」という自覚をうながしたのでしょう、これ以来まとまりが良くなり、チームワークも円滑になります。山城以外は。


そして、後半の山場は、浦のひざの故障から始まります。前年の大会で大ブレーキの原因となった故障が、箱根1日目の不運なアクシデントで再発し、浦は自分もチームのために身を引くべきか悩みます。

門脇や吉池監督などは、故障に気づいても「自分からやめると言わない限りは走らせてやりたい」と思い、浦本人も去年自分が失敗した場所でリベンジしない限り先へ進めない、と走ることを選択しました。そして、相変わらず1人だけ協調性のかけらもない山城に「俺のために1番でタスキをつないでくれ」と優勝の可能性を託します。


託された山城は、最初は無視するつもりでしたが、これまたレース中のアクシデントで脚を負傷。痛みで完走もおぼつかなくなり、自分のためという動機だけでは最後までは走れないと悟ったとき、残りの距離を走りとおすために彼が選んだのは、浦のため、ひいてはチームのために走るという決意でした。

ここに、学連選抜チームは完全に1つのチームになったのです。

その山城から1位でタスキを受け取った浦も、ひざの故障でドクターストップがかかりかねないほどの苦痛をこらえて走ることになりますが、最終的にその彼を支えるのは「俺は学連選抜のキャプテンだ」という意識です。おそらく、自分自身のリベンジという理由だけでは、この苦痛に耐えて最後まで走ることはできなかったのではないでしょうか。


私自身、過去にフルマラソンを3回走っていますが、何回やってもこれは大変な苦行で、途中で息や心拍数が上がって苦しくなったり、脚の痛みがひどくなったりして、棄権したくなる瞬間が必ずあります。

もしこれが知り合いが誰もいない土地に一人で行って、沿道の応援の人もほとんどいないという状況のレースだったら、そういう時に本当に棄権してしまう可能性は高いと思います。

その誘惑に耐えて最後まで走れるのは、やはり見に来てくれる家族や友達がいるから、同じレースで走っているラン仲間がいるから、沿道で声援を贈ってくれる方々がいるからです。

自分のためだけに、というのは意外とモチベーションとしては弱いもので、それでは自分の限界は破れません。苦しみに耐えて最善を尽くすには、やはり「誰かのため」という動機づけが大事なのです。


登場人物のその後…
この「チーム」を読んでからあらためて後日談である「ヒート」を読み直すと感慨深いものがあります。

まずは何と言っても山城。「ヒート」でも唯我独尊っぷりを発揮していましたが、「チーム」の頃はそれに輪をかけた傲慢かつ傍若無人っぷりです。

「チーム」を読んで、学連選抜の思い出を大切にしていたり、浦に久しぶりに会った時に思わず頬がゆるんでしまったり、浦にデザートを横取りされても怒らない山城というのがいかにレアなのかということがよく理解できました(^_^;

一応、「チーム」での経験を経て丸くなってはいたのね… 確かに終盤、10区の浦にタスキをつないだ後、ゴールで浦を出迎えようと走り回り右往左往する様子はほとんど可愛いと言ってもいいぐらいで、思わず山城に同行していたマネージャーといっしょににやけてしまいました(^^) ある意味、このシーンがこの本の最大の見どころかもしれません(さすがにそれはどうかと)


その浦は「チーム」では前年度のトラウマを抱え、山城の扱いに苦慮する悩み多きキャプテンでしたが、「ヒート」では内面が語られないせいか、意外に演技派の一面も見せるものの、山城が言う通りの単純で明るいキャラクターに見えます。特に最後にやらかす大ポカで、やっぱり基本がお人好しなんやな~と思いました(^^)

「ヒート」の時点では、学連選抜チームの中で走り続けている選手は3人しかいないということでした。山城と浦は実業団に入ったことがはっきりしていますが、残る1人はおそらく朝倉でしょうか。門脇は、教師になって陸上部の監督はしているものの、本人はもう走っていないという記述があります。残念(T_T)


吉池監督は、「ヒート」ではペースメーカーの甲本にゴールまで走りぬくように助言し、東海道マラソンの解説者も務める役回りです。浦と同じく、東海道マラソンに乗り気でない山城を説得する役も果たしているので、学連選抜チームではまったく監督の言うことを聞かなかった山城に対して意外と影響力があるようです。

一応は教え子の山城より甲本に対して肩入れしているようだ、と東海道マラソンの担当者である音無に不思議がられるシーンがありましたが、苦労してきた甲本に対するシンパシーがあるだけでなく、もしかすると山城を才能のあるライバルと出会わせてあげたい、みたいな親心っぽい気持ちもあるのかな?と「チーム」を読んで思いました。


こうして2作読んだことで、何か登場人物たちに愛着がわいてしまったし、ぜひ後日談、たとえば引退して指導に回った浦や山城が脇役として登場する話なんてのも読んでみたいです。というわけで、続編出ないかな~壁|ω_・*)チラッチラッ (←いい加減しつこい)

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けだま
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女性
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マラソン、食べ歩き、読書
自己紹介:
マラソン歴…約3年。
年齢…40代。
目標…サブ4.5!
名古屋ウィメンズマラソン2015のPRランナーとして始めたブログです。
2016年大会では年齢制限が厳しくなったため(悲)PRランナーになれませんが、引き続きマラソン・スイーツ・ご当地キャラなどの名古屋情報をアップしていきます。

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